以前、HRV(Heart Rate Viability: 心拍変動、HRV計測の素人解説はこちら)について取り止めのない文章を書きました(こちら、こちら、こちら、要約版はこちら)。そもそも何でHRVを気にするかというと、自転車のトレーニングとかに由来する疲労やらストレスやらを身体計測した数値で予測したいと思ったからです。
爺である私が持久系のトレーニングを続けると、ある日突然FTPが激減しそれまでのトレーニングができなくなってしまい、それが回復するのにえらく時間がかかるという事態にしばしば陥ります。「生理的オーバートレーニング」というヤツだと思いますが、私が爺なせいか、近頃では1.5ヶ月ぐらい定常状態でトレーニングを続けると生理的オーバートレーニングを発症するようになりました。そしてそこから回復するの3ヶ月ぐらいかかるという失活→回復サイクルを繰り返しております。なので一年の大半は回復トレーニングに費やされていることになってます。うーん、何だか「トレーニング」という溌剌とした言葉より「リハビリ」という老人臭のする言葉のほうがしっくりくる感じですな。まあ、疲れたりやる気がなくなっちゃったらトレーニングを止めればいいのですが、幼少期に梶原一騎の薫陶を受けている世代なので、辛いとなると意地を張ってしまい、結果的に生理的オーバートレーニングになってしまうのです。「早う止めないと生理的オーバートレーニングになるでえ」という数値的な目安があればそんな無理をしなくなりそうな感じがします。その目安にHRVがもしかしたら使えるかもしれない、では確認しようということで、昨年の8月からHRVの計測をする事にしました。
で、Polar H10という乳バンド式心拍センサーと「Elite HRV」というアプリを使って4ヶ月間毎朝のHRVを計測したので、以下に概要をご報告させていただきます。先に結果を申し上げますと、HRVはトレーニングをやる/やらないの目安としては「あまりあてにはならないが全くあてにならないと言うほどあてにならない訳でもない。」というものすごく曖昧な結果でありました。
HRVの計測は、Elite HRVを使って人のアスリート(自転車競技)の寝起きHRVを計測したという論文がありました(ものすごく結果の曖昧な論文です)ので、その計測方法に倣い起床時カーテンを開ける前にセンサーとiPhoneを接続し1分経過後から2分30秒間データを取得しました(Elite HRVの「MorningHRVという機能を使用)。計測期間は、2025年8月1日から12月31日までの毎朝で、モノグサ&痴呆な私には珍しく計測しなかった日はありませんでした(暇なだけ)。寒くなってくると寝起きの朝っぱらから水で濡らした乳バンドを乳頭付近に巻き付けるのは結構苦痛で、それがストレスになって交感神経が発動してHRVの低下を招くということも考えられたりしますので、濡らさなくてもよい乳バンドを開発してほしいものです。
被検者である私の計測期間中の体調は、計測開始の8月1日は生理的オーバートレーニングに陥っていた時期で、その後、8月5日にコロナを発症したため、8月の中旬までは自転車のトレーニングをしておりません。なんとか動けるようになってからZWIFTのFTPを140Wに設定し、徐々にFTPの設定を上げながらSSTを中心としたトレーニングを行いました。2ヶ月後の10月初旬にFTPを計測したところ204Wだったので、Zwiftの設定を200Wにしたのですが、その強度についていけず設定を190Wに落として現在に至ります。8月1日から12月31日の期間で、残念ながら生理的オーバートレーニングに陥ったことはなかったので、なんだか何のために計測していたのかなんだか曖昧な感じです。そうかといって自発的に生理的オーバートレーニングになるのも難しいので、生理的オーバートレーニング時におけるHRVの挙動を把握する事は今後の課題になりました。
次に、HRVその他の4ヵ月間の経時変化をFig.1と2に示します。Fig.1は朝の心拍数、血圧、HRVの生データの経時変化です。心臓がドキドキする回数、ドキドキの圧力、ドキドキの間隔の変化なのでなんらかの相関があるかと思ったのですが、なんかほとんど相関がみられません。私の場合、血圧と自転車トレーニングの関係はトレーニングをすると血圧が低めになる事が多いという感じです。一方、心拍数とHRVの生データは血圧と相関がないので自転車トレーニングとの相関もないという事になります。ううう、いきなりHRVに関する目論見が外れてしまいました。
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| Fig.1 心拍数、血圧、HRVの経時変化 |
まあ、HRVって心拍間隔の変動で単位はミリ秒(mS、1/1000秒)です。精密機械でもない人体で、しかもヨボヨボの爺の心臓が1/1000秒単位で精密に制御されているとはとても思えません。その日その時の出来心で適当にドキドキしているんじゃないでしょうか?そうはいってもせっかく4ヵ月もデータを計測したのに、諦めちゃうのはもったいない感じもするので、HRVデータを統計的にこねくり回してむりくり関係づけてみることにしました。とは言っても私は統計とか数値解析とかは私が最も苦手とする分野です。じゃあ何が得意なのかと聞かれると困っちゃいますが、まあ、よだれをたらしながら鼻くそをほじくるとか、排便後に肛門からはみ出た脱肛を指で戻すこととか、Zwiftをやると金玉の皮がずる剥けになるのでそれを口実にトレーニングをさぼるとか・・・。まあ、鼻くそとか脱肛とかはこの際どうでもいいのですが、とりあえず微分・積分がでてくるような小難しい統計解析とかは手に余るので、運動生理の分野で使われる解析方法を簡単に適用できないか考えてみました。
この手の分野でまずやるのは平均値を算出することらしいです。なので、とりあえずHRVの生データに関して、42日間(EM_42、緑のマーカ)と7日間(EM_7、水色のマーカ)の指数加重移動平均をとってみました。別に42日間と7日間の単純平均値でもよいのではという感じもしますが、なんか小難しげでカッコよさげなのとトレーニングの指標であるCTLやATLも指数加重移動平均を使っているので採用してみました。株のチャートでよく使われる指標ですね。平均対象の日数が長いほど凸凹が丸められて滑らかになるので、長期的にどのような変化をしているか把握できます。今回のEM_42のデータだとコロナに感染して何もトレーニングしていなかった頃から徐々に回復してトレーニングによってHRVも上昇してその後一定になる事が見て取れます。FTPが180W位になるとHRVの数値の上昇が頭打ちになる感じです。一方短期の指標は直近のデータの影響が大きくなるので、グラフの凸凹が大きくなります。今回のEM_7のデータだとコロナ以降の回復期では大きく跳ね上がり、その後はEM_42のデータに絡みつくように上下しながら推移しています。EM_7のデータは最近一週間のHRVの相場みたいな指標といえます。なのでHRVの最近の相場と体調を関係づけられれば、HRVが使えるという事になります。自転車のトレーニング分野では「CTL(TSSの42日指数加重移動平均)-ATL(TSSの7日指数加重移動平均)=TBLでTBLは疲労の指標である」とか闇雲気味に言ってます。ので、これが適用できないでしょうか?ということで、EM_42からEM_7を引いた数値を計算してみたのですが、ほとんどEM_7の経時変化の傾向と同じになってしまい何が何だかわからなくなっちゃいました。うーん、だから何なの?やっぱダメじゃんという感じです。
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| Fig.2 統計処理したHRV値の経時変化 |
・・・無意味にプロットが増加していくグラフを眺めながら思いつきでHRV生データからEM_7を引いた値(HRV-EM_7)というのをやってみました。ここ1週間の相場とその日の生データがどれだけ違っているかという数値です。これをプロットして体調と照らし合わせてみると、なんとなく体調と関係があるような感じもしました。が、体調という計測目的が感覚的なものなので、その「関係があるような感じ」というものを数字で表す事ができません。最初から気づけよという感じもしますが・・・ここまで計測するのに時間もお金(ものすごく割高な心拍センサー)もかかっているので、ここであきらめちゃうと菩薩の仏像にしがみついて九十九里浜に流れ着いた私のご先祖様に申し訳がたちません。が、残念ながらややこしい解析は私には手に余るのでここはここはとりあえず、感覚的に閾値を設定して、それ以上なら体調OKそれ以下は体調BADということでお茶を濁す事にしちゃいました。その日のHRVの値が最近の体調の相場から大きく外れてるというアラートになります。8~12月にやった感じだと閾値としては、-5mSぐらいがよさげだったので、グラフでは-5のところに点線を入れてあります。かえすがえす残念なのは、この-5という数値は感覚的に設定しているもので、感覚以外に根拠がないということです・・・なんだ結局感覚じゃん。
あと、HRVの周波数解析から得られる低周波/高周波比(LF/HF)も体調と相関が高いという感じがしたのでグラフにプロットしました(紫色のマーカー)。これは交感神経由来とされる信号(LF)と副交感神経由来らしい信号(HF)の比なので、体調と相関が低かったら大変なことになっちゃいますが、まあ、それなりに相関ありそうでよかったです。こちらのほうは数値が2以下だとOK、以上だとBADという感じがしました。
HRV-EM_7とLF/HFだと、若干、HRV-EM_7のほうがよさげな感じですが、うーん、まあそんな感じがしたということで確固たる根拠があるわけではありません。
で、グラフからHRV-EM_7やLF/HFと体調やトレーニング時の感覚を見返してみると、HRV-EM_7やHF/LFが良くてもトレーニングしたらダメダメだったり、HRV-EM_7が悪くてもSSTがそれほどつらくなかったときがあったりと、完全に体調を反映した数値ではありません。合ってるときもあれば合っていないときもあるという感じです。HRV測定の原理からすると腰や痛風が痛かったりするとストレスでHRVが低くなるはずなのですが、HRV的には絶好調という数値が出たりします。
以上4ヵ月HRVを計測して結果から、トレーニングやサイクリングをする/しないの判断基準としては、結局のところ、体調に関する感覚、やる気、HRVという順で判断する事になると思います。HRVの運用方法としては、体調がいいのか悪いのかわからない/やりたくないけどやっておかないと後々悔やむことになる、という場合にHRV-EM_7の数値を見て-5以下ならあきらめる、という感じですかね。
今後は深度体温も使ってみたいと思っていますが、あれはまだ高いんだよなあ。もう少し安くなったら使ってみたいですね。
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